Friday, July 09, 2004

「あっぷする~と」は相変わらずに。

またまた登場の「あっぷする~と・シャワルマ」、奥の間には相変わらずイェシバの学生達がテレビに見入っているし、前回マーク氏が作ったカウンターのおかげで、一人でも気軽に入りやすい店内の雰囲気となって、お客さんは大入り。うんうん良かったね、マーク氏。とキッチンに目をやると、あら、なんと、あなたはハッサンではないか!

そう、このハッサン、彼は「謎」のトルコ人。
トルコのとある町からなぜかイスラエルに出稼ぎに来て早数年が経ち、最初のころはイスラエルでもアラブの町のほうで働いていたのが、パレスチナとトルコの歴史的理由が原因であまりいい待遇を受けなかったらしい。そこでいつの間にかマーク氏の『あっぷする~と』マジックにかかってここの一員に。でもあのハリルが来る前にハッサンはどこかへ消えてしまったのが、なんと、今夜はごくごく普通に、いつものようにまたちゃんとキッチンにいるではないか。

「ハッサーン!久しぶり!まだイスラエルにいたの?」

そう尋ねると、ふきんを持ったままの手で相変わらずスポーツ刈りの頭をなでながら、彼は恥ずかしそうにはにかんで、掃除用のスプレーを左手ににぎっている。彼はどこでも・なんでも・いつでも掃除魔なのだ!あっという間にテーブルからお皿を下げてシュッシュッとスプレー、サササッとふきん。店内はおかげでいつもよりはるかにピカピカ。

「えっ?市民権を得たからもう大丈夫?ずっとここにいられるの?」

ななななんと、謎のトルコ人ハッサンはいつの間にかちゃっかりとイスラエルの市民権を得て、市民としてのIDまで持っていて、一週間前に『あっぷする~と』に帰ってきたらしい。うーん、消えている間にどうやらこれをどこかで手に入れてきたのね。

それからしばらくすると、ハリルがいなくなってからハッサンが帰ってくるまでここで働いていた、エルサレムの旧市街に住むアラブの男性が残りのお給料を貰いにやってきて、私を見るなり「探してたんだよ」と言う。ん?なんだろう、と思っていると、彼はいま旧市街で家族と一緒にレストランをやっているので、『あっぷする~と』と同じように店内にメニューの写真を貼りたいから、それをお願いしたいという。ちょっとどう返事をしようかと、横で話を聞いていたくるくる目のマーク氏をチラッと見ると「いいんでないの?」っといつものノンキ顔をしている。「それじゃ、まあ、とりあえず、そのうち行きますわ。」というと、来週には必ず来て欲しいと八の字眉毛にして泣き出しそうな顔をするので、断るに断れず、じゃあ、いついつの午後の三時あたりに行くということでOKしてもらった。

あらららら。正直、ちょっと困りましたなあ。というのも、イスラエル国内でもアラブの町の物価はユダヤの街の物価よりもうーんっと安く、おまけに彼らの写真代というものの相場がわからないし、わかったらきっと私はこの仕事は断ってしまうような気がするので、やってもいいと思うのならば聞かないほうがいい。でも現像代がやっと出るだけのというのは、ちと困る。それともうひとつの困ったなあは、彼らアラブの好むスタイルは目茶目茶派手なのだ。ニッポンのトラック野郎の赤や黄色や紫の電飾ピカピカでド演歌のあの感じ、といえばピッタリくるような、そんな派手さはまさにアラブのお気に入り。そういう人たちが良いねーという写真ってなんだろう?困ったなあ・・・。とりあえず、来週、旧市街に行ってみます。

「ね、ところで、この前の魚は?」
と、マーク氏、思いだしたように聞く。
「えっ?この前来た時にグリルしてくれたお魚?おいしかったよ!今日もあるの?」
と、ワタシ、ニコニコと答える。
「ハローハロー、誰かいますかねぇ?」
と、マーク氏、私の頭をつ、つ、く。
「ん?・・・・あっ!・・・忘れてた!来週もって来るわ!!」

そうです、すっかり忘れておりました。前回マーク氏に頼まれた新しいメニューの魚のグリルの写真を。撮影した後に食べたんだよねー、あのお魚さん。いやはや、あのお魚、おいしかったのでちゃんと食べたことだけは憶えておりました。と、いつもの『あっぷする~と』の夜はふけてゆく。